問題の捉え方の問題

 

 

私の臨床経験ですが、不登校、ひきこもり、発達障害などを抱える人の生活史で、注目されない程度のことの中に、後にそれは重要であったことが分かる事柄です。以下の事柄で該当することがあれば、「今、困ってないからいい」でなく、注意が必要です。

 

1.通常でない言動、それが生活上、影響が大きければ注視しますが、注視すればするほどその方法論を求めるあまり、以下の全体像が見えにくくなり、誤支援(ミスマッチ)を起こす可能性が高くなります。


→問題を引き起こす原因には、発達特性上のこと、性格、自我、人間関係による様々な感情の積み上げ、ストレス、トラウマ、自己洞察力、依存心、環境、当人の問題意識、問題を起こすことによって新たなる問題が付け加わる危険性や悪循環、周囲の理解度や受容状態など広範にわたって影響し合っているものです。これらのことを考慮しない問題への直接的な働きかけや、〜はどう対処するか、〜と書いてあったのでやってみた・・・は注意が必要です。

例)登校を渋るり、その原因を言わないので、甘えと捉え、無理矢理学校に行かせた。その後、学校に行くことに抵抗を強く示し、まったく学校に行かなくなった。学校に行かないのなら勉強をするように言っていたが、強い嫌悪感を示した。本には、「見守ってあげましょう」と書いてあったので、今は具体的な働きかけはしていない。経過は、昼夜逆転し、外出も少なくなり、些細な事で切れやすくなり、自己要求を満たすための行動がエスカレートしてきている。

 

2.「細かいことだから、困ってないから大丈夫」は、大丈夫か? 疑問を持つべきです。


→環境から求められる行動には、年齢によって違いが出ます。今は、よくても将来は求められることの量や質に変化が起こります。将来を想定して今を見て、大丈夫かどうか判断する必要があります。

例)勉強はよく出来るが、休憩時間中は友達との交流は、ほとんどなく、読書などをして一人で過ごしていることが多く、人に迷惑をかけるなどの逸脱行動のエピソードは、なかった。しかし会社に入ると出社拒否をして引きこもってしまった。医療機関を受診して発達障害を抱えていることが分かった。


3.問題を起こしていない状態は、本当に問題ないと言い切れないことがあります。


→通常問題と認識されないことの中に注意すべきサインがあることを知ること、また問題が少なくなったり、なくなれば、その証明になることが見つからないこと、環境因が作用し、本質は変わっていないのに一時的な問題消失や減少がある場合、置かれている状況からすればストレスになるはずが、問題が起きていないことには、注意が要ります。

例1)不登校の状態になっている人の特徴にまじめ、几帳面、繊細、優しい、素直で反抗しないない、自己主張せず従順などがあります。一つ一つは問題と感じさせないことですが、組み合わせによっては、気をつけるべきことなのです。詳細は「不登校になりやすいリスク」を参照してください。

例2)ADHDやその他の逸脱行為を抱えるケースに時々見られることですが、ストレスが加わり過ぎないように、うまく賞罰を使うなどして、周囲が逸脱的行為が起きないように対応していると一時的に問題が減少していくことがあります。しかし負荷を加えないような支援体制を組むことが、出来なくなると状態が悪くなるなど。

例3)思春期までの人間関係で、友達がいないか、いるが特定の1〜2名で、それ以上の人とは関係をとっていない、逆に不特定やかなりたくさんの友達と関係をとっている、または持続的な人間関係が取りにくい場合に、対人スキルに問題を抱えていることの確率が高く、後に対人関係上、集団生活適応上の問題が顕著になる例が多い。


4.問題が表面化していなくても子どもの外での様子がよく見えない(わからない)には注意が必要です。


→外での出来事を自発的に言わないし、聞いても「知らん、忘れた、別に」などの返答を多用するのであれば注意が要ります。深刻なことと受け止められないのですが、後に大変重要であることが分かることがあります。

外で辛い嫌なことがあってそれを受け止めてもらえない、または叱られる、都合が悪いことが生じるなど、なんらかの表現しづらい環境になっている可能性が高い。こどもが自分で対処できる範囲の事柄であればいいのですが、そうでない場合は、事態が深刻化していた例があります(深刻ないじめやそのトラウマ、不登校など)。日頃、家庭でのコミュニケーションがよければ気づきも早いのですが・・・

 

5.感情表現に乏しい

 

→出来事については、話しますが、それについて自分はどう思うかどう考えるかなどを表現をあまりしない。これは日常的に困る問題ではありませんが、その内訳は、過剰な不安を抱えていることがほとんどです。自己表現することで、それが相手に対して,悪く受け止められる。そうすると相手は自分に対してネガティブな反応を返してくるという確信的観念とそれへの不安感情が生じて、表現することにブレーキをかけてしまいます。これが繰り返されるとストレスが高まり、心的苦痛を訴えて集団の中に入りづらくなったり、入れなくなることが多いです。

例)不登校になった事例に多い

 

6.親が感情的にならない。もっと優しくならないといけないと我慢することには注意が要ります

 

→感情的になる原因は、こどもが親が思った展開にならない時です。生じた感情を抑えることは、抑えることが出来るうちが出来るので、それを超えると出来なくなります。

そして、こどもとの感情のもつれによる関係性が悪化してきます。もっと優しくは、この状況下では困難です。感情的になりにくくするのは、子どもの状態に応じたことを要求すればいいのですが、そのためにはこどものことを深く知る必要があります。


※以上の事柄に関連したことは「よくみられる誤認と誤対応」  「支援方法」 「ちょっと一言」に記載されているので参照してみてください。