支援と就労について  

 問題解決への支援に傾注しすぎない

問題に対するアプローチは自然な流れで矛盾が無いように見えます。しかしそれぞれの問題と関連し合っているため、特定の問題に注視すればするほど本質を見過ごしてしまい、結果として効率の悪い支援になって、逆に解決されにくくなる事があります。全体的に見る事はとても大切な事です。

 自立を促す支援

自立の本質は主体的に考えて行動することを意味します。主体的とは、目的意識が明確で、大抵は状況判断や自己洞察も連動して進みやすい状況にあるので、問題があっても乗り越えようとする意識が働きやすく、他動的な支援よりもはるかに効果的です。よって自立を促すには、子どもの事から親がどう手を引いていくか、自分の置かれている状態とその影響を理解していくことが出来るかが重要なポイントとなります。


 発達障害児(者)は成長する

発達障害の本質はスキルのおける歪みや偏り・遅れで、完治する性質のものではありませんが、対応如何によっては症状が緩和されます。情緒・精神的な面においては、障害の有無を問わず成長していきますので、「自立を促す支援」が最も効果的になってきます。


 陥りやすい誤支援

「きっと困るから、手助けして困らないようにする」・・・一見、理にかなっているように思えますが、これには親自身が見たくない現実を見えないようにするためであったりもします。
この影響としてありがちなのは、葛藤の少ない環境の提供で、情緒・精神面的側面においての成長の妨げとなります。自己の問題であっても、他人事のような感覚を持ち、問題を前にどうすべきかを考えるスタイル形成がもてなくなってしまいます。

 事態解決や軽減に向け、マッチングした支援を目指す

どの子においても、マッチングは存在します。マッチングすると、それに伴い状態が改善します。
無理なく出来る事から開始し、いくらマッチするからとはいえ、実現の可能性の少ないものは避けましょう。無理でないから継続でき、継続するから効果が出やすいのです。
二次障害の多くはミスマッチが原因で起こります。改善が見られない、子育てが楽にならないなどは、ミスマッチを起こしている事の証明です。
上記のような「陥りやすい誤支援」「問題解決に注視しすぎない」「自立を促す支援」を念頭に置きましょう。

 受け止める事の重要性


子どもが示す受け止めがたい現実は、親自身にある常識や経験・将来的な事への不安と理想との乖離を引き起こし、一つの問題に注視した誤支援を招いてしまします。
問題を起こしている原因やその影響を子どもの視点で見ていけば、嫌悪感は薄らいで、受け止めやすくなります。
受け止める事が出来ると客観的に見易くなり、感情もコントロールされ、コミュニケーションも改善され、気づかなかった子どもの一面や変化・成長が見えやすくなります。これこそが、子どもと向き合う土台となります。

 自己を知ること

自己の実現をする為に、その課題や影響とどう向き合い解決していくか?
そのためには自分がどのような状態にあるのか自覚が無いと、どんなに周囲が必要性を感じてあれこれ促しても、行動に移すことはないでしょう。
年齢に関わらず、おかれている現状と、どう解決するかの問いかけは早期から始めるべきで、まさにこれが「自己を促す支援」となります。

 抱え込まないこと

誰にでもあるはずの日常の様々な出来事に対する感情、これを表現しないあるいは出来ない事は、精神衛生上望ましくありません。
話さない原因の中で多いのは、楽しい事が少ない・言えば叱られる・言っても受け止めてくれるものではない、と自身で察してしまうからです。
自分ひとりで事態に耐えられ解決出来ればいいのですが、そうでない場合、深刻な事態を招く事もあります。受け止める事はとても重要な事です。

 コミュニケーションの重要性

お互いを理解する最大のツールはコミュニケーションです。これが不十分であると情報が限られ、支援する際の大きな妨げになります。
表現が少ない原因の多くが、周囲からの評価を恐れる・否定される・叱られるなどのためで、そのために抱え込み、孤立している状態になっています。

 問題に向き合う姿勢を作ること、試練を乗り越えること

自立が進んでいる場合は、必ず主体的に問題と向き合い、目的や目標を持って行動しています。また、だからこそ問題が解決されやすくなります。
本人の変化意欲が乏しい場合は、どうしても他者から言われて行動を起こすこととなり、強いストレスを持つことになります。あるいはその逆に、周囲がその子に適応し過ぎて、ストレスが少なく問題が見えにくくなる場合もあります。しかし、自己理解が進んでいないので、結局問題が噴出してしまいます。
「自立を促す支援」の重要性が浮き彫りとなります。

 就労 


就労前段階の職場体験や基本的なマナーやルールの教育機会は必要ですが、就労への移行や持続に必要なスキルのエッセンス習得は、実は幼少期からすでに始まっています。
例えば、自分で出来ることは自分でする、自分で出来ることを増やす。嫌でも必要性があればやりきること、自分を知ること、目の前にある問題に向き合うこと、指示に従うこと、挨拶すること、感謝を態度で示すこと、反省すること、人のことを考えることなどで、これらの事柄は上記の支援内容にも含まれていることなのです。

※紹介した支援はそれぞれが独立しているのではなく、関連し合っています。どれから手をつけても、必ず連動的支援となります。