<質的変化>
カウンセリングをしていて、今までになかったことが出てきたなと気付くことが度々あります。大抵は良いことが多いのですが、その逆も少なからずあります。
私は、問題の増減変化より、質的変化の方を重視します。それは少しの変化でも今後の大切な指標になるからです。たとえば、環境も含め、支援が当事者にとって妥当であるかそうでないかの目安になることや今まで成長段階のステージが変わることを意味することがあるからです。問題にばかり注視していると良くも悪くも質的変化を見過ごしてしまいやすく、場合によっては好転の根をつむか、暗転をさらに悪化させる危険性もあるのです。
質的変化は、たくさんありますが、代表的なものを取り上げて説明します。その一つが自立(律)心の出現で、今まで指示しないとやらなかったことを自発的に始める。自分のことを自分で考え判断し、行動するなどで、日常の中では、複数程度の自発行動が現れます。以後はどうなるかは、前項の「自立について」を参照してみてください。これに伴うかほぼ同時的に出てくるのが、向上心で目標を設定し始めることで、それを手にするために思考し、行動を起こし始めます。さらに、耐ステレスも向上し、失敗しても乗り越えようと努力が始まります。ケースによりその強さの違いはあれ、このような連鎖反応を起こします。この反応が見られるときは、当事者にとっておおむね環境や支援が適切に働いていることを意味します。また連鎖反応の確認がとれないけど、ある行動だけ自発的であり、上記の連鎖反応が見られないのは、自発行為でなく、何らかの報酬や罰により、それがモチベーションになって行動に結びついている場合でよい反応だけを出すために他者が操作を継続することは、かえって自発意識を抑止していることになります(例外的に単発的に賞罰を使い、真の自発行動へ結びつける有効な方法もありますが)。
よくない質的変化として、拒絶、逃避、新たなる不安の出現を示すケースで、その原因は、前項で説明した、共依存に陥っているケースや当事者にとって抵抗があっても指示に素直に従い、自分で物事を決めにくい自我の弱いケース、当事者のキャパシティーを超えた要求をされ続けた、失敗経験がトラウマとなってそれから抜けれないでいる場合などです。