<はじめに>





私が学生の頃、関東のある総合病院でアルバイトしていた時に、診断名が「未成年?」と付いた。十代前半の男性で、コミュニケーションは取れますが、どことなくぎこちない表情、筋肉があまり付いていないやせ方をした体型でした。その男性は大きなトランポリンの上に寝かされ上下に振動させられたり、やわらかい布のようなもので皮膚をなでるなどの感覚統合療法を行っており、私は、その補助をしていました。その療法を受けていた男性は、今、多くの人が知る発達障害を抱えている、おそらく自閉症スペクトラムに該当する男性であったように思います。これがきっかけのすべてではありませんが、学校卒業後には小児に関わる仕事をしたいとの思いを持ち、小児施設を探していたときに紹介された、ある国立療養所に就職しました。その施設は重度の脳性麻痺、筋ジストロフィーの専門施設で当然それらの方にリハビリテーションをすることだと認識していたのですが、私の上司(外科医)と小児科の先生が、乳児健診で、おおよその発達に大きな遅れはないが、歩行獲得後に、行動やコミュニケーションなどに問題が出ているケースがいるが見てみないかと言われ、そこから再び発達障害を抱える子どもたちとの出会いが始まりました。
当時は、発達障害の用語は積極的に使用されず、「学習障害」の用語をよく使われていたと思います。出現率は、おおよそ人口の2%程度で・・学習や行動、コミュニケーションなどに問題があり・・・と言う説明で昭和60年ころだと思いますが、NHKで取り上げられたことを記憶しています。同時期に自閉症、注意欠陥多動障害につても専門雑誌に取り上げられることが増えるようになりました。これら発達障害の出現率はかなり高いにも関わらず、社会的な認知度、教育的、社会的ケアーも不十分でした。
ケース会議や講習会活動を通じで教育関係者への啓蒙活動をしたものです。
気がついてみると発達上の課題や不登校など不適応状態にある方やその家族の方との関わりを持ち始め35年を過ぎ、出会った方は約1200人あまりになりました。
対応が必要な領域は、医学、心理、教育、生活、就労と多義に渡ります。また問題は単発でなく他の問題と関連しあって影響が出ます。振り返ってみると、人により問題やその背景、経過は勿論異なりますが、診断名が違っても、年齢が違っても、環境が違っても状態が良くも悪くもそうなるが故の指標のようなものがあることに気づいていきました。これは、特別で難しいことではなく、考えてみれば当たり前のことのような気がします。このことを多くの方に知っていただき、何かしらの参考になれば幸いです。